佳き日に




のんびり、ぼんやりした様子で琥珀は言葉を紡ぐ。

「でも、お金があれば大抵の不幸は避けられるから。」

琴は、反論出来なかった。

琥珀はただの思いつきを口にしただけだろう。
その考え方が当たり前なのは分かる。
学校にいって、良い成績をとって、いい大学に入って。
そして、いい会社に就職して安定した収入を得る。
それが、何より無難で安全安心な生き方だ。
愛なんていう形のないものに命を賭けるよりもずっと賢い生き方で。

口の中にバタークリーム特有の粘つきがある。

じゃあ、妻子を残して愛する人のために死んでいった雨は、どうなるのだろう。
残された茜は、雨をどう思ったのだろう。

琴の疑問に答えられる人は一人もいなかった。