佳き日に




「本当に、夢見過ぎだって言われるでしょうけど、メモリーズが普通に暮らせる日々が来ると思ってるんです。というか、僕と兄さんで変えてみせるつもりです。」


段々と、桔梗の口調がはっきりしてきた。
話してるうちに自信がついてきたのか、桔梗が今までこの熱い志を隠してきただけなのか。

おそらく後者だろう、と琥珀は思った。
何度も捲られ、ボロボロになった桔梗の参考書に触れる。

「メモリーズでも普通に学校に行けて、身を隠して生きなくてもいい世界。そうなったときに、学校に行けなかったから教養がないってのもかっこ悪いじゃないですか。」

というか、悔しいですし。
ふいっと、横に視線をズラした桔梗の目は茶色く、濁りは一切見えなかった。

「まだ、存在さえも認識されてないメモリーズですけど、絶対に変えてみせます。」

少し目をキラキラさせてそう語る桔梗。

琥珀は一瞬惚けてしまった。

今までの常識を一転されたかのような衝撃。
琥珀は長年、夢は何か、と聞かれればなりたい職業を答えていた。
それはそれで悪くはないのだろう。

だが、桔梗が語る夢はもっと希望に満ち溢れたものだった。


『青年時代に悲観していてはいけません。徹底的に戦うのです。』

どこかの偉人の名言を思い出した。
誰だったかは忘れたが、まさに桔梗にぴったりの言葉だな、と琥珀は思った。