佳き日に





琥珀は慌てて何か話せる話題を探す。

「桔梗くんは、何で勉強しようと思ったの?」

「え?」

虚をつかれたように桔梗は顔を上げる。
茶色いビー玉のような目が琥珀を見つめている。

「えっと、あ、桔梗でいいです、呼び方。」

「あ、うん。」

右、左、フラフラと視線を彷徨わせている桔梗。
何か言いにくいことなのだろうか。

コホン、と一回咳払いをし、少し掠れた声で話し始めた。


「いつか、メモリーズが堂々と人間と一緒に生活出来る日が来ればいいなと思って。」

もじもじして、言いにくそうにしていたから、何か邪な考えでもあるのかと思ったが、全く違った。
逆に、とても前向きな考えだった。

琥珀はメモリーズについては雪や閏から少しずつ説明してもらっただけで、分からないことのほうが多い。

分かっていることは、選ばれなかった人たち、警察から追われ、記憶を盗める。
あと、死体は残らない。
残るのは、ゴミの山だけ。