佳き日に





リンゴジュースを飲みながら鉛丹が二人の会話を聞き流していれば、いつの間にか数学から国語の話題へとうつっていた。


「読んでいたほうがいい本ってありますか?」

「夏目漱石と太宰治とかかな…」

あ、そいつら、名前だけなら聞いたことあるな。
鉛丹はそう思ったが、それ以上その二人について知っていることはないので何も言わないことにした。



リンゴジュースも飲み終わり、暇になった。

チラッと琥珀の隣に座っている雪を見れば彼はコーヒー片手に本を読んでいた。
ブックカバーは付けられておらず、題名が容易に読める。



『トマトさん、宙返り‼』

突っ込むべきか否か、鉛丹は十秒ほど考えた。


「なぁ、雪。」

「…なんだ?」

「その本、題名がかなりアホっぽいぞ。」

「内容もなかなかアホだしな。」





メモリーズで一番強い男の趣味は鉛丹に理解できるものではなかった。

仕方なしに、鉛丹はジュースを買いに行く。