「その届いた通信の中に、隣の入植地との連絡が取れなくなった。また近隣の入植地との連絡が途絶えたという情報があり、すぐに人を派遣して調査するように依頼をしたとのことであります。そして調査結果を二十四時間以内に報告するように伝えてあるとのことですので、明日の午後までは調査結果が届くものと思われます」

「ただ、不思議なことに通信が可能になった所と不可能な所に、かなり偏りがあります。先ほど火星の地図を見ながら説明を受けましたが、通信の不可能な場所が火星の半球一面に広がっています。どうも小惑星群が上空を通過した面ではないかと考えております。これについては、もう少し通信状況が、まとまってくれば確定できるものと思います」

「以上が、ただいま届いた情報であります」

「尚ここで、いったん休息とし、通信状況の精査と確認、確定作業を行ない午後三時より再開したいと考えますが、宜しいでしょうか」

会議場は通信不能地域が火星半球一面に及んでいるのを聞き、不安感が広がったが、これから確定作業を行なうということなので、異論は無く休息に入った。

昼食後、李は補佐官たちと通信本部へ急いだ。その途中、各国の全権代表が数名あちらこちらで集まって会話をしているのが目についた。

彼らにとって火星からの通信が入り始めたのは朗報だが、火星の状況や調査隊の異変など、まだ多くの疑問や謎があり安心できる状況ではない。

ある代表などは不安心理からか、鋭い顔つきで、今すぐに小惑星群の破壊決議をすべきだと説いている。

宇宙空間で彗星や小惑星などを破壊する場合には、日時や場所などを慎重に検討しなければならない。

太陽系に存在する人類の基地や入植地、宇宙ステーション、調査船、探査機、連絡船や貨物船など、さまざまなところに被害や影響がでないように決定し行動されなければならない。

簡単に、すぐにできるものではないのだ。感情的に判断しては取り返しのつかない大問題が発生する可能性があり、普段であれば軽々しく立ち話で発する言葉ではない。