「以上が今までのところ、お伝えできる、すべての状況であり情報であります」
「何か、ご質問は」

言い終えた李は、もう一度ドアに目をやった。

「事務総長」
フランス全権が声を掛け、質問をする。

「小惑星群が原因でないとすれば、他にどのような原因が考えられるのでしょうか。それと火星の状況を調べる手だては他に方法が無いのでしょうか」

「たとえば火星を発って間もない連絡船とか貨物船を反転させて火星に戻し、調査を依頼するとか、あるいは火星へ向かっている宇宙船に対して速度を上げて急いで到着するように指示をするとか。また火星と木星間の小惑星帯調査の為に、往復中の幾隻かの調査船がいる筈で、それらを小惑星群とか火星の調査に振り向けることは可能なのではないでしょうか」

この質問に対して、李に代わり補佐官が出てきて答えた。

「何度も申し上げている通り、現在、原因は全く不明であります。発見された小惑星群も一隻や二隻ならまだしも、すべての異常の原因ではないであろうと考えられます。機器の故障も五隻に立て続けに発生した可能性は限りなくゼロに近いでしょう」

「それ以外の考えられる原因としては、我々人類の未だに知りえない宇宙現象が起こったとも考えられますが、これまでの観測においては、何も新発見はありません」