発見された小惑星は非常に暗く、どうやら太陽光を反射せず、吸収しているのかも知れない。なかなか発見できなかったのは、発見された小惑星が小さかったのもあるが、その暗さにも原因があったと思われる。

その後、月や地球の宇宙ステーションからも小惑星を捉える事に成功したが、解析してみると、どうも一個ではないようであった。

数日間、観測を継続した結果、複数個集合している小惑星群ではないかと考えられた。そして、その頃には火星の、やや性能の劣る観測機器でも飛来する小惑星群が観測できるようになった。

進行方向は火星に向かっている。
しかも、かなりな速度で進んでいて、火星に、どんどん近づいている。

この知らせは、ただちに全体会議を開催していた地球連合本部に届けられ、知らせを受けた翌日の全体会議の冒頭に李が、この報告をして、今までの経過から鑑みて非常に重要な発見であり、今後の対処を討議したいと申し出た。

もちろん世界中の全権は最重要課題だと考え、宇宙開発や宇宙開発機構の問題を一時的に棚上げにして、発見された小惑星群の対処についての討議を開始した。

最初に問題になったのは、発見された小惑星群らしき物体が今までの、すべての消息不明船に影響を及ぼしたのか、また、その可能性があるのかどうかである。

これには宇宙開発機構から来ていた科学者が

「すべてに異変を起こすことは、軌道の状況を推定する限り不可能であると考えられるが、少なくとも小惑星を発見したのではないかと思われているエウロパ・ステーションの交代要員を乗せた調査船とトリトン号には可能性があります。ただし今後の軌道解析などの研究を待ってからでなければ、断定はできません」
と答えた。