「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢

二人は年配の夫婦で、三人は家族のようである。

それぞれが席についたが、由紀たちが座っている隣の一から四番の席だけが空席となっている。

間もなく十時になろうというのに到着するのが遅れているのか。それとも昔の由紀たちのように欠席なのだろうか。
由紀は、ちょっと気になった。

十時になりセレモニーの開会が宣言された後、大マーチングバンドが先頭をきり入場を始めた。

左手が入場門のようで、そちらから、流れ込んできているのだが、遠くてよく見えない。そのかわりにスクリーンに、入場して来る光景が映し出されているので、それを見ている。

見ているとマーチングバンドに続いて、ブラジルのサンバチーム、その次にはアメリカのカウボーイやカウガールの格好をしているチーム、最後にトルコのスルタン率いる大昔の衣装のトルコ軍チームが入場してきた。

トルコ軍チームが入場してきた頃、先頭をゆくマーチングバンドが由紀たちの目の前に差し掛かってきた。

すごい数の大マーチングバンドに、由紀たちの見ている周辺の観客席から大拍手が沸き起こり、マーチングバンドが徐々に右手に向かって移動するにつれ、拍手が、どんどん右手の観客席へと移ってゆく。

その後、次々とやって来るブラジルチーム、アメリカチーム、最後のトルコチームにも同様の拍手が送られる。それぞれのチームが少し進んではパフォーマンスを行い、また少し進んでは行ないながら移動して行く。

しんがりのトルコチームが由紀たちの目の前に進んで来てパフォーマンスを始めたので、よく見ようと前へ乗り出すようにして見ていると、横で声がした。

五番の席に座っていた直が横を見ると五十歳くらいの男性が

「セレモニーを見ている最中に入ってきて、邪魔をして申し訳ない」

と言いながら四番の席に着席している。