直はゴールデンゲート・パーク近くの、小高い丘の上に建っているアパートメントを借りて住んでいた。

その窓からゴールデンゲート・パークの方向を見ると、その南に小高い丘が続いていて、家が、びっしりと建っているのが見える。その丘の西に太平洋があり、夕方になると、湧き上がった霧が太平洋の方角から丘を乗り越えて流れてくるのが、よく見られた。

その流れは、まるで水が流れる如く土地の低いダウンタウンに向かって進み、やがて、そびえ立つビル群の裾から溜まっていき、ダウンタウンは霧に沈んでゆく。

霧はゴールデンゲート・ブリッジの方からも湾内に流れ込んできて、ダウンタウンを沈めてゆく。その時、運がよければブリッジが霧の上に浮かんでいるかのように見える。

また休日の早朝にゴールデンゲート・パークを散歩すると、うっすらとした朝もやの中で少女が、ゆっくりとした動きで太極拳をしていたり、少年がバスケットボールのゴールの練習をしていたりする。そういう風景を見るのが好きであった。

晴れた日にサンフランシスコ湾を望むとアルカトラス島の向こうに見えるエンジェルアイランド、ちょっとおしゃれなピア・サーティナインやソウサリート、ゴールデンゲート・ブリッジを渡って対岸から見るサンフランシスコ市街、ツインピークスからの夜景、マーケット・ストーリートの突き当りから見上げるベイ・ブリッジ、曲がりくねった坂道のロンバード・ストリート、シール・ロックの上で休むアザラシなども好きな景色である。

また坂道を上るケーブルカーにも、よく、とび乗ったし、フィッシャーマンズワーフでパクついたクラブ、ブロードウェイ・ストリートの時々飲みに行っていたピアノバー、休日の朝、いつも食べに行っていた近くのレストラン・・・
思い出すと、きりが無い。

しかし、この大勢の中で偶然に、よく出会えたものである。