由紀は歩いているうちに、どこかで宏に擦れ違うような、そんな気がした。

そういえば二番札所に着く前に理絵が言っていた。

「お父さん、昔、自分が育った家を見に四国へ来ているかなぁ。もしかして歩いている途中で擦れ違ったりして」・・・

理絵も恐らく、由紀と同じ様な気がしたのであろう。

由紀は、しばらくして、もう一度、理絵を見た。
スヤスヤと軽い寝息をたてながら、もう熟睡している。

由紀もその後、宏や直、理絵や勇太さんのことが頭に浮かんでは消えたりしていたが、まもなくすると眠りについた。

明日の準備をしながら見ていたテレビで、明日から天気は下り坂になると言っていた。
十一番を過ぎると、四国山地の山道が待っている。

雨の山道は、歩き遍路にとっては厳しい。
歩いている間の天気だけでも、持ってくれればよいのだが・・・