隣の香川県の讃岐うどんが有名であるが、ここら辺りのも美味しい。

食べていると突然、隣の席で食べていた、おばさんが話し掛けてきた。

「昨日、今日と暑いなぁ。あんたら女二人なん。大変やなぁ・・・」

この女性の話によると、この近くの千メートル以上もある高い山の頂上付近に、樹齢が数百年を越える、つつじの大木の森があるそうである。

自然の状態で残されているのは日本の他の地域には無く、見られるのは、ここだけだそうである。

「ちょうど満開の頃やから見に寄ったらいいのに」
と教えてくれた。

二人とも見に行きたいと思ったが、巡礼の途中であり、歩いて千メートルの山の頂上まで見に行くのは諦めた。

食事を済ませ少し休んだ後、二人は、また歩き出す。

十番切幡寺までは阿讃連山の裾野を進む。

南には吉野川の向こうに急峻な四国山地が広がっている。その山々の中に吉野川南岸の平野から三角の山が、そびえているのが見える。かなりの標高がありそうで、おそらく千メートル以上はあるだろう。

その山を見つけて、珍しく理絵のほうから由紀に話し掛けた。

「ねえ、あの山。三角の形をした、あの高い山。さっきのおばさんが教えてくれた山じゃない。頂上に、つつじの大木の森があるって言っていた」

理絵が、指を指しながら話す、その方向を見て由紀にも、すぐに分かった。
「そうねぇ、たぶん、あの山ねぇ。つつじ、今、満開だって言ってたよね。ここから見えるかなぁ」

二人とも目を凝らして見たのだが、見えない。なにぶん遠すぎる。しばらく見ていたが、やっぱり分からない。

「綺麗でしょうねぇ。見てみたいなぁ」
由紀が呟いた。