「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢

朝、歩き始めた頃に見えていた、青くきらめいていた海が、今は暗くなり、風も少し強くなってきて波が大きくなり、波頭が岩に砕けている。

今日は、今までの行程の中で最も長い距離を歩く予定であり、二人とも雨の中を、レインコートを被り、どんどん歩いてゆく。

いつもは一時間歩くと、休もうと言って二十分くらい休息を取る由紀も、今日はあまり休まずに歩く。

室戸への道は、山と海が直接対峙していて平野など無い。

あるのは山と海のみで、その間に一本の道が通っているだけである。

もちろん人家もほとんど無く、ときたま、ひとつの集落が山と海の間の狭いスペースに何戸か存在しているのに出会うが、次の集落までの距離が、すこぶる長くて遠い。

おそらく日本本土では、最も人口の希薄な海岸線の、ひとつではなかろうか。

空海の頃には、その道さえなく、大きな岩が、ごろごろと転がり、波の打ちつける海岸を、苦心しながら進んで行ったのであろう。

その山と海と空しか見えない道を二人は、歩いてゆく。

夕方、今夜の宿に着いたのだが、その手前の海岸では、サーフィンを楽しんでいた若者たちの姿が見えた。

夜、部屋で小惑星群破壊に関する報道を見ていると、三日ぶりにお婆ちゃんたちから電話が掛かってきた。

今夜は須崎市で泊まっていて、明日は四万十市で泊まり、四万十川で獲れた鰻料理を食べると言う。前回来た時には、四万十市の東にある大方町という所から船に乗り、ホエール・ウォッチングをしたそうだ。

鯨は信じられないくらい巨大で、初めて見た時には、びっくりしたのと同時に感激したそうだ。