李は通路へ出て、そこにある窓から、外を眺めている・・・

しばらく外を見ていた李は、通信本部へ立ち寄り、入ってきている情報をチェックした後、公邸へ戻ろうと、夕暮れの少々暗くなってきた通路を歩き出した。

たそがれに染まるニューヨークの街には、明かりが点りはじめていた・・・




「理絵」・・・「理絵」・・・
由紀は少し間を置いて、もう一度呼んだ。

「理絵、そろそろ起きないと、遅くなるよ」

由紀は先ほどから何度も理絵を起そうとしているのだが、いっこうに起きてくれない。
昨日は四番大日寺まで、お参りして宿に入った。

暑い一日だった上に、歩き遍路初日だったこともあり、疲れているのかも知れない。

それと、お兄ちゃんの直や、直の友人で理絵の恋人である勇太さんのことが気になり眠れていないのかも知れない。

由紀も昨夜、寝床で息子の直のことを考えていて、なかなか寝付けなく、せいぜい数時間しか眠れていない。

今朝は、七時半ごろ出発するつもりで、六時前に起床する予定であった。

由紀は、がんばって起きたものの、まだ眠気が残っている。

「理絵、もう起きようよ、六時半がきてしまうよ」

ようやく理絵が目を開け、由紀を見た。

「理絵、疲れているの。もう少しゆっくりして出発するのを遅らそうか」

と由紀が訊くと、理絵は首を横に振りながら

「いいよ、もう起きる」

と言って、蒲団から出ると、着替えを始めた。