昼前には由紀よりも年配の、男女五人グループに追い抜かれて

「一生懸命に歩いているのに、お母さんより年上の人たちに、抜かれてしまったね。今日は筋肉痛も無く、快調に進んでいるのにね」

と理絵に言われた由紀が

「しょうがないわね。悔しいけど、やっぱり実力の差かしら」

と言った後、一呼吸置いて

「しかし、どうしてあんなに元気なのかしら。近頃は私らの年代よりも年上の人の方が元気なのよね」

と納得したようなことを言うので理絵が言う。

「そうなの、お母さんだけじゃないの。私はお母さんだけかと思った。日頃からたいして運動もしていなかったしね」

対して由紀が

「私だって高校生の時には、バスケット部のレギュラー選手で、ぶいぶい言わしていたのよ。男子にも負けないくらい体力があったのよ」

と言うので理絵が

「残念ね。その体力が維持できていればよかったのに。今では豚ちゃんの如く、ぶいぶい言っているのよね」

由紀が理絵に、言い返そうとした時、頬にポツリと雨のしずくが当たった。

空を見上げると、いつの間にか雲が覆っている。

そういえば、今日の昼前後から雨になると言っていた。

二人は天気予報が、ぴったりと当たったねと言いつつ、少し先に道の駅の標識が見えたので、慌てて、そこへ駆け込んだ。

道の駅に入るとレストランがあり、その前のメニューのサンプルを置いてある陳列ケースの横に、筆で書かれた大き紙が貼ってあり、その張り紙には躍るような文字で
「初鰹入荷!絶品、鰹のたたきは最高!旨い、おいしい、今が旬!」と書かれてあった。