地球へ、どの程度の距離まで接近するかは、もうしばらくの観測が必要とのことであったが、火星の近くを通過した後、方向が変わり地球方向へ向いたそうである。

火星の重力が影響しているのかも知れないが、なぜ、地球方向へ向いたのかは、まだ結論が出ていないようである。

一般に木星や土星のように大きな重力で彗星や小惑星の軌道が変化するのは知られているが、火星程度の大きさの重力で、どの程度、変化するのかは、はっきりとは分かっていない。

地球付近への到達日時は明日の午後くらいまでには、おおよそ判明すると報告があり、さまざまな事柄が明日になれば分かってきそうである。

その後、通信状況を、しばらく見守っていたところへ、小惑星群の観測隊を選抜する為に、小惑星帯を往復中の調査船や火星と地球の間を航行している宇宙船から抽出していた作業班が、予定の時間よりも、若干、遅れて入って来た。
作業班の責任補佐官が

「予定より遅れて申し訳ありません。ただいま選抜作業が終了致しました。これより小惑星群観測の指示を発信したいと思います」

「これが選抜された観測隊のリストです。ご確認を、お願い致します」
と言ってリストを李に手渡した。

そこには全部で五隻の宇宙船の名前と現在位置が記してあった。それをチェック後、すぐに発信するように指示をして李は席を立ち上がった。

テーブルの上に一時間も前に出されていた、冷めたコーヒーを一気に飲み干すと、会議場へ向かった。

午後三時
会議場では補佐官が火星の通信状況を色分けした地図を配り、その後の経過を説明し始めた。