通信本部に入った李や補佐官たちは通信可能な地域が百ヶ所ちかくに達していることを聞き、やや安堵したが、通信可能になった地域を色分けして示してある火星の地図を見て

「やはりな」・・・
と李は呟き、しばらく見ていた。

火星半球に通信の回復不能地域が広がっている。

確認作業の結果は、やはり回復不能地域が広がっている面の上空を小惑星群が通過したのだと結論付けられた。だが、どうして、そうなったのかは不明である。

これだけ広範囲に被害が及ぶとなると小惑星が直接、火星表面に衝突でもしない限り考えられない。しかも大きな小惑星でないと、こうはならないであろう。
しかし、そういう事実は無い。

観測された小惑星群の最も大きな物は直径二キロメートル程度はあると推定されているが、その小惑星は現在も確認されている。

その他の物は直径一キロメートル以下の小さな物ばかりであろうと思われているが、何個、存在しているのか、はっきりとは判明していない。

おそらく数十個は存在しているであろうと考えられているが、その中の地球や観測衛星からでは観測困難な大きさの小さな小惑星が、もし火星に衝突していたとしても、これほど大規模な被害は発生しないであろうし、衝突すれば、当然、火星に設置してある地震計などの観測機器や地球や観測衛星からの観測でも分かる筈である。

しかし、そういう観測結果は、どこにも無い。
どうして、そうなったのか、至急、原因を解明しなければならない。

そこへ軌道を解明している科学者が来て、小惑星群は火星の近くを通過後、地球へ向かって飛来していることを告げた。