「………」


俺が普通に美月のいるキッチンへ向かっても、美月は全く気付いていない様子。


こっそり見ようとは思っていないけど、
普通に遠くから声をかけても面白くないので

近付いてから声をかけてみようと企んだ。


『美月ー!?』


そう呼んだ瞬間、
美月はビクッと体を跳ねらせた。


「っま、さや…!?」


プッ。
いつものクールな美月とは思えない驚きようだな。


「ななな何で?!今日遅くなるって…!?」


しかも吃りすぎ。


『今日は早く終わったんだよ』


「そっか…」


『で、お前は何やってんの?』


「え…うわぁぁぁ!雅也、見ちゃだめ!」


何かに気付いて美月は慌てている。

訳ありだとすぐにわかる。


『は?何でだよ』


「ななな何でも!」


あわあわと俺に手元を見せないようにしている。


『怪しい』


「怪しくないからっ!」


何だよ、そんなに俺に見せられないことしてんのかよ。


そう考えるとちょっと面白くない。


「あ、あ、あの、これは」


言い訳が思い付かないらしい。
意外と嘘付くの苦手なんだよな、美月は。


『何?俺に見せられない物なの?』


「ち、違う!」


その質問にはハッキリと答える美月。


じゃあ、何だ…?


付き合いはもう長い。
美月のことなら何でもわかっていたと思ってたけれど、今日の美月は全くわからなかった。