雪君がいなかったらきっと今の私はいなかったと思う。

だから、私が雪君を思う気持ちの全てを今日雪君に伝えようって決めたんだ。


◇◆◇◆


それにしても本当に遅い。
さっき確認した時間から更に15分近く経っているのに…。

これでいったい何回目なのだろうか。
何度も携帯の画面に表示されている時間を確認しては溜め息をつく。
メールだってさっきから何通も送っているのに一通も返ってきていない。
電話だって何度かけても『おかけになった電話番号は現在電波の届かないところにあるか電源が入っていないためかかりません………』という留守番電話の繰り返し。

「早く来ないかなぁ…」

…どんなに遅れて来ても、雪君に逢うことさえできればいい。
この後一緒に映画を見に行く約束だったけど、今からじゃきっともう間に合わないだろう。
でも、本当は雪君と一緒にいられれば何でも良かった。

…ただ、傍にいられれば。

空からふわふわと舞いながら降ってくる雪や、色とりどりに飾られたイルミネーションに囲まれながら私はそれから2時間近く雪君を待っていた。


愛しい彼が私のいる場所に走って来て、"遅れてごめん"と言いながらいつものような優しい笑顔を見せてくれると信じながら。

それがもう絶対に叶わないことだとを知るのはそれからすぐのことだった……。