下に降りると美味しそうな匂いが漂ってきた。

この匂いはもしや…


「あ、やっぱり!フレンチトーストだ♪」

蒼お兄ちゃんお手製のフレンチトーストって大好きなんだよね!


「いっただきまーす!」

「ゆっくりよく噛んで食えよ? お前、ほっといたら皿ごと食いそうだもんな」
「た、食べないよ!」

「アハハッ 冗談だよ、そんな風船みたいな顔しなくても…」


風船って…失礼な。


「ん! おいひ〜」

外側の耳はサクッと、中のパン生地はふわふわのはちみつ味。


「本当に蒼お兄ちゃんって料理上手だよね」

私はフレンチトーストを口に頬張りながら言った。


「そりゃ、かわいい妹のためですから! 夕飯は冷蔵庫に入ってるから残さずに食えよ?」

「もうっ! また子供扱いする…私もう高2だよ?」
ヤバッ、今一瞬『もう社会人なんだから』っていいかけた!

危ない、危ない。


「…あれっ? お昼いらないってよく分かったね」

「あ、あぁ。 さっきバタバタ怪獣みたいな音が上からしてたからな。出掛けるんだろ?」

「うん。 帰りちょっと遅いかも」

「了解。 あんまり遅くならないようにしろよ」

「分かってるって!」

「通り魔さ、隣町にまた出たらしいし唯ちゃんも帰り危ないだろうしな」


あれ?

蒼お兄ちゃんもしかして唯と出掛けるのと間違えてる?


「蒼お兄ちゃん、出掛けるの唯じゃなくて……」


――ピンポーン


「誰だろ?」

「待ってろ、俺が出てくるから」

「うん」


しばらくして聞こえてきたのは蒼お兄ちゃんのバカでかい声だった。


「なんでお前が来るんだ!!」

「蒼お兄ちゃん? どうかしたの」

私は玄関へと向かった。


「なんで、お前が来るんだ…雪斗!」

「えっ、雪君!? まだ時間あるし…それに時計台前で待ち合わせだったよね?」
「何っ!? 真白、お前唯ちゃんと出掛けるんじゃ…」
「違うよ、雪君と」

「兄ちゃんは認めません!男女交際なんてまだ早い!」

「ブッッ 変なこと言わないでよ! そんなんじゃないから! 雪君、いつもごめんね…蒼お兄ちゃんが」

「いや、いつものことだしな」


蒼お兄ちゃんは私が雪君と仲良くするのをあんまり良くは思ってないみたいで…雪君に会うといつもこうなんだよねぇ…。


まぁ、昔からだし素直じゃない蒼お兄ちゃんなりの挨拶?みたいなものなんだと思うけど。


「だいたいにして……」


まだ言ってるよ。

だけど、雪君も私も慣れてるから「「はいはい」」で済ませてるんだよね。


本当、蒼お兄ちゃんって優しいけどちょっと度が過ぎてるというか…過保護というか。