それからどうやって病院に行ったのかよく覚えてない。
ただ、何かの間違えであることをひたすら願っていた。
でも、そんな考えはすぐに消されることとなる。


お兄ちゃんと看護師さんが雪君のいる部屋へと案内してくれた。
部屋のプレートに書かれている文字は『霊安室』。
部屋に入ると肌寒く、うす暗かった。

…やっぱり嘘だよ。
こんな場所に雪君がいるわけがない。
そう思ったのに…部屋にあるベッドに雪君は眠っていた。
そっと雪君の頬をなでる。

……冷たい。

まるで、雪か氷のように。触れた頬はひやりと冷たかった。
昨日まで感じていたぬくもりはもうどこにも感じられない。



「雪君、目を開けてよ。こんなの嘘だよね?…ねぇ、起きてよ……。いつもみたいに"嘘だよ"って…"大丈夫"って…言ってよ!!」


私は喉が潰れるまでひたすら泣きながら冷たくなった雪君を何度も何度も揺すって起こそうとした。

「ねぇ、起きてよ……雪君。」


でも、いくら起こそうとしても雪君は起きなかった。…まるで、ドラマか映画でも見ているような気分だ。
こんなの、悪夢だ。


……雪君は長い眠り…"死"という名の永遠の眠りについたんだ…。


それを理解するまでしばらく時間がかかった。