車を走らせてる間
須藤さんはコースの説明以外
ずっと黙っていた。
いつもなら、
角を曲がる度に怒られて
ブレーキのタイミングに舌打ち
されるのに…
――結局無言のまま
自動車学校に帰ってきた。
初めての路上教習で
自信がなかったから、
車を停めた後
私は自分から聞いてみた。
「あのー……私の運転
どうでしたか…?」
すると、初めてちゃんと
須藤さんと目が合った。
「前は隣に座ってて
怖かったけど、今日は周りを
よく見れるようになってた。
これからも頑張って。」
………嘘。
褒められ、た……?
自分でも単純だと思うけど
いつも冷たかった彼に
微笑みながらそう言われて
私の心は完全に……
彼に掴まれてしまった。