須藤さんに怒られてばかりの
私だったけど、

運転にもだいぶ慣れて
路上に出る前の実技試験である
修了検定は、一回で
パスすることができた。



「やったねー美子」



「うん…とりあえず
よかった」



祐美と喜んだのもつかの間。



翌日初めての路上教習で
私に付いた教官は、
やっぱり須藤さんだった。




「…よろしくお願いします」



車に乗り込んで
そう言ったけど、
須藤さんの返事がない。



「……………………」



いくら須藤さんでも
いつもはよろしく、くらい
言ってくれるのにな…



そう思って
ミラーを直していると…



「ハックション!!!」



あまりに大きなくしゃみが
助手席から聞こえた。



びっくりして須藤さんを見ると
少し赤くなった鼻を
ごしごしこすっていた。



「…ごめん。行こっか」




もしかして、意外と
普通の人……?



須藤さんに対する印象が
少しだけ変わった瞬間だった。