「須藤、さん…?」
その背中に声を掛けると
須藤さんは振り向かずに
こう言った。
「……早く地元帰れ。
お互い、取り返しがつかなくなる」
「……………!!」
言葉を失う私に構わず、
須藤さんはドアを開けた。
部屋を出てガチャリ、と鍵をかけると
何事もなかったかのように
歩き出した須藤さん。
忘れろって言われても…
早く帰れって言われても…
あんなことされたら、私…
立ち尽くす私を振り返り、
須藤さんが言った。
「俺、明日休みで居ないから…
余計なこと考えないで
試験、受かれよ」
じゃあな、と言って
また歩き出した須藤さんは
もう振り返ることはなかった。

