涙色の季節《短編》



自動車学校が近づいてくると、
須藤さんはスピードを緩め
腕時計を確認した。



「何とか、間に合いそうだな…」


そしてちらりと私の方に目をやり、
ゴホンと咳払いをした。



「……ごめん」



その声は、須藤さんに似合わないくらい
弱々しくて、
私は彼の表情を確認するために
顔を上げた。



「内緒に、してもらえる?」



ばつの悪そうな顔で言う須藤さんが、
なんだか可愛くて、
私はクスッと笑ってしまった。



さっきのは機嫌が悪いというより、
ただ焦ってたんだ。



「寝ちゃったことをですか?
それとも…
スピード違反をですか?」



少し意地悪に
私は問いかける。



「…両方に決まってるだろ?
ほんと、俺と君だけの
秘密ってことで頼む」



俺と、君だけの
秘密――…



その響きが嬉しくて、
私はドキドキしながら
誰にも言いませんよ、と
微笑んだ。