この質問が出た瞬間、自分でも自らの顔が歪んだのがわかった
だけど、こんな質問がされることは遥かに予想がついていたから、なんとかすぐに顔を元に戻せた
「お父さんが転勤しなきゃならなくなって…」
そう言って少し唇を尖らす
“ホントは転校したくなかった”という表情を作る
ホントに転校はしたくなかったけど…
そうすれば、さっきの転勤の話が本当っぽく聞こえてくるから
「そっかー、ま、ドンマイ」
そう言われてホッとした
変に同情されるのは嫌だった
もうどう足掻いたって、元には戻れない
だから、稲垣雪がこんなふうに返してくれてほっとした
嘘を信じてくれたから…というのもあったが…

