ブロロロォ
ふぁーっ。
……やばっ!
デカい口でデカいあくびしちゃった。
あたし、村上叶〈むらかみかな〉は、
すかさず口を手で塞いだ。
あたしはどうも朝が苦手。
寝起きの目にこれでもかってくらいに朝日が射し込んでくる。
朝も夕方ぐらいに薄暗かったらいいのになぁ…。
なーんてバスに揺られながら考えてるあたし。
プシューーーッ
……着いた。
あの人……あの男の人が乗ってくるバス停に。
ドカッ
そして今日も尚、あたしの隣の空いてる席に座った。
……空いてる席はまだ他にもあるのに。
この人があたしの隣に座るようになったのは半年ほど前から。
半年間、隣同士で座ってるのにまだ一度も話したことがない。
この男の人の名前は佐々木というらしい。
胸についてる名札に佐々木と書いてある。
だから名字しか知らない。
名字だけしか知らない。
……妙にこの男の人……佐々木くんの事が気になる。
ただの興味本位。
何も言わずにドカッとあたしの隣に座ってくる佐々木くん。
話しかけてくる様子はないし、あたしも話しかけない。
“おはよう”って一言言ってやりたいんだけど。
あたしはチラッと隣をみた。
高い鼻。長いまつげ。きれいな形の唇。茶色の軽く立った髪の毛。
