先輩は本気だ。
本気で…殺される…。
立ち上がって後退りする。
けど先輩から離れるものの、先輩もジリジリと近づいてくる。
「許さない許さない許さない…死ねばいい死ねばいい死ねばいい!!」
ゆっくり近づいてくる先輩に恐怖を抱いて、もう1歩後退りした時だった。
ガッとそこに転がっていた鉄のパイプにつまづいてしまった。
そのおかげで尻餅をついてしまった。
先輩はそんな私にどんどん近づいてきて、距離はだんだん短くなっていった。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねー!」
カッターを持った腕を上げてふりかざされ、もうダメだ!と思い目をつぶる。
「……?」
けど、痛みは感じない。
あれ?
とゆっくり目をあけると、目の前には驚いた顔をして青ざめている早瀬先輩がいた。
どうしたんだろう…と思いつつも、先輩の手を見てみると手首を誰かが掴んでいた。
「えっ…?」
先輩の手を掴んでる手は私の方から伸びている。
だからと言って、私が先輩の手を掴んで阻止してるわけじゃない。
じゃぁ…誰?
首をゆっくり右に回して見ると…私のすぐ後ろには、険しい顔をした黒木先輩がいた…。
左手で私を抱よせて、右手て早瀬先輩の攻撃を受け止めている、という状態だった。
先輩の息がかかりそうなほど近い距離。
意識してボッと顔が日照る。
って…今はそれでころじゃない。
正常に戻った私は黒木先輩に声をかけた。
「せん…ぱい」
「…良かった。
無事…じゃないけど、無事みたいだね」
「無事じゃないけど、無事?」
「ほっぺ…」
その一言でわかった。
「あぁ、これはただのかすり傷ですよ」
「…ごめん、守れなかった…」
「そんなこと…!」
否定しようとしたが先輩の刹那そうな顔を見たら、なぜか言葉を途中で飲み込んでしまった。



