【実梨】




―次の日―






「紀田くん…」




「……」




「「ごめん!!」」




「「…え?」」




お昼、屋上に紀田くんを呼び出した。




もちろんもう付き添いをやめてもらうのと、謝りの言葉を言うため。




けど、なぜか謝った時紀田くんと言葉がハモッてしまった。




「え、ごめんて…」




「桜井こそ…」




「私は…もう先輩を不安にさせたくないから…。
だから、付き添いをやめてもらおうかと…」




「あぁ、それね」




「うん…。
ごめんね、紀田くん心配して付き添ってくれてたのに…」




「いいよ。
俺も付き添いはやめようと思ってたから」




「そうなの?」




「あぁ。
まぁさっきのごめんはそういう意味かな。
このままずっと一緒にいたらあの先輩に殺されそうだし」




「…ハハハ」




苦笑いして言う紀田くんの冗談に、小さく笑う。




そっか、紀田くんも同じこと思ってたんだ…。




「いろいろとありがと、紀田くん」



「えっ、あ…や…」




曖昧な返事をして顔を赤くしながら頭をかき、目を反らす紀田くんは照れてるのかな?と思い、何だか面白くてまた笑った。











「…けど、1人で大丈夫か?」




「うん、私も嫌がらせには負けないようにしっかりする。
ちゃんと、先輩と話合ってみるから…」




「…そっか。
まぁ桜井がそう言うんなら、俺は止めない。
頑張れよ」




「ありがとう」





「これ…ヤバくなったら連絡しろ」




電話番号が書かれた紙を渡しされ、紀田くんはすれ違い際に私の頭にポンッと手を置いてから行ってしまった。




手が置かれた場所に自分も手を置いてみる。





…すごく温かかった。





「…紀田くん、ありがとう」