「…い、おい!」
ボーと考えていたところに、大声で呼ばれてビクッと体が反応する。
「は?」
「…実梨…泣いてたか…?」
…あぁ、先輩も先輩なりに気にしてたんだ。
「えぇ、かなり泣いてましたよ」
なんか面白くねぇ。
何でこんなにイライラしたりモヤモヤすんだ…。
「そっか…。
…あのさ、今日帰り校門で待ってるって伝えてくれねぇか?」
「え?」
「一緒に帰るから。
あ、お前は付いて来んなよ」
「…は、はぁ…。
それはいいすっけど…。
先輩こそ桜井とどういう関係なんすか?」
「はっ、俺?
お前知らねぇのか?
俺と実梨は付き合ってるんだよ」
……は?
え…ぇ?
つまり、カレカノってこと?
マジで?
「体育祭の日、俺が実梨に告ったやつ結構有名なんだが…」
「し、知らないっす…」
てか体育祭の日、俺39度もある高熱出して寝込んでた訳だし…。
知らねぇはずだわ…。
え、てことは相思相愛っつうか、もう想いが通じあってんじゃん。
「ま、そういうことだから」
「じゃ」と行こうとする先輩に、俺は「あっ」と呼び止めようとした。
けど呼び止めたとして、その後どうする?
これ以上なんかあるか?
去っていく先輩の後ろ姿に伸ばした手をゆっくり下ろす。
『俺と実梨は付き合ってるんだよ』
先輩の言葉が何故か胸の奥に刻みついた。



