実梨が保健室で泣いていた頃―…。




【紀田】




桜井を保健室で休ませている間、俺はあと1分で授業が始まると言うのに、先輩を屋上に呼び出した。




「…何だよ、話って…」




「…先輩、来てくれたんすね」




「あぁ…」




授業が始まるチャイムはとっくに鳴っている。




それでも先輩は何故か余裕そうに見えた。




「…お前、実梨とどういう関係?」





俺が、呼び出したのに、先輩が聞いてるし。




桜井と話していた時は、穏やかで優しそうな人に見えていたけど…。




実際俺と二人きりになると何だか印象が変わったような感じがする…。




「…別に、俺と桜井はただのクラスメイトですよ。
それ以上でも、それ以下でもない…」




「本当か?」




「えぇ」




甘かったかな…。




穏やかにことが済みそうと思ってたけど…そうもいかないみたいだな…。




かなりの嫌気を出されてる。




まぁ別にいいけど。




「で、話って?」




「…先輩、誤解してません?」




「誤解?」




「俺と桜井ができてるんじゃないかって」




「…そんなことあるわけねぇだろ」




何かよくわかんないけど、凄い睨まれる。




「…そうですね。
あるわけないですね」




桜井はあんたの事が好きなんだし…。




けど、先輩もこの様子じゃ桜井が好きみたいだな。




良かったじゃん、相思相愛で。




そう思った時、何かがモヤッとした。




「……?」




何だ?




気のせい?




「まぁそういうことなんで、俺と桜井はただ昼飯を一緒に食ってただけです。
別にやましいことがあるわけじゃない」




「…わかった」




わかってくれたか。




ほっと一安心する。




…そういえば、先輩って桜井が嫌がらせにあってんの知ってんのかな…。