二人でたわいもない話をしながら学校のグランドへ着いた。








「あれ、キミあの時の子…?」



隣からそう言う声が聞こえた。



立ち止まってキョロキョロとしてみる。




誰のことを言ってるんだろう…?




「実梨、どうしたの?」




立ち止まる私に佳も立ち止まった。



「いや、何でもな…」


「やっぱり、この前の子だ!」



何でもない。



そう言いけようとした時、ちょうどさっきの人の声と重なってかき消されてしまった。



誰よ、朝からそんな元気な人…。



佳から眼を離し、反対側を向いた。



すぐ目の前に立っていたのは、すごくニコニコしている男の人。



私より10・15センチぐらい高くて、佳とほぼ同じぐらいだった。



「そこの彼氏、見覚えあるからさ、隣にいるのはあの時の子かな〜って、思ってたんだ」



頭に手をやりながら喋り出す。



けど、私には何のことかよくわからなかった。



佳に見覚えがあるってことは、佳の知り合い?



「ねぇ佳、誰あの人」



こっそり耳元で聞いてみる。


佳は無言で首をふった。



じゃぁ、人間違え?



話しかけて来た人はにこやかにいまだ話している。



「あの…誰ですか?」



そんな人に釘をさす。



怪しい眼をして…。



「あれ、ごめん
まだ自己紹介まだだったね」



ハハハと苦笑いをして、話を中断する。



「俺は、黒木愁
2年A組だ」



なんと、この人は1こ上の先輩だった…!




佳と同じぐらいの背だし、いきなり話してくるから、タメだと思っていた。



佳がでかいのか…。




よく見ると、この先輩は背も高くて、顔立ちも整っている。



まさに、イケメンと言うやつだった。



といっても、佳もそこまでは負けていないと思う…。




でも、私はこんな先輩に会ったのは初めてだ。



名前ならちょこっとクラスの女子が出していたのは覚えているけど…。



そんな先輩が私たちに、何の用で話しけているのだろう…?



首をかしげながら先輩を見る。




「あ、もしかして覚えてない?」



「残念ながら…」



「そっか〜
あ、そこの彼氏くんは覚えてる?
俺のこと」



「…いえ」



「え、彼氏くんも覚えてないの!?
何かショックだな〜」



またしても苦笑いをする。



先輩には悪いかもしれないけど、覚えてないものは覚えてないのだ。