「へー、うまそう」
「そう?」
紀田くんは私のお弁当の中身を見て言った。
「いいよ、好きなの1つ取って」
「マジで!?」
どうせいつもと変わらないおにぎりに、トマト、卵焼き、ミニハンバーグだし…。
「んじゃ、これ貰う」
紀田くんが取ったのは卵焼きだった。
…ちょっとびっくり。
男の子って肉が好きだから、ハンバーグとると思ってたのに。
さっそく卵焼きを口にいれる紀田くん。
そして…。
「うまっ!」
第一一言がそれだった。
「あ、ホント?
なら良かった…」
今日の卵焼きは少し甘すぎるかもって思ってたけど、大丈夫だったみたいだね。
「え、これ桜井が作ったの?」
「うん。
母さんも父さんも朝忙しくしてるから、いつも私が作ってるよ」
「へー、料理上手いんだな」
「そんなことないと思うけど…。
普通だよ」
「ふーん。
あ、これお返しにやるよ」
そう言われ、お弁当に入れられたのはエビフライだった。
「いいの?」
「いいよ。
だって俺昨日エビフライ食ったし」
ということは、昨日紀田くん家は天ぷらだったんだ…。
「ありがとう」
もらったエビフライを一口食べてみる。
シャクッといい音がした後、ほんのり塩味がしておいしかった。



