「おはよ、実梨…って、何でスリッパなの!?」
教室に入ると、さっそく前の席の子が挨拶をしてびっくりする。
「ハハハ、昨日上履き持って帰っちゃって、今日持って来るの忘れたんだ…」
その女の子の席の側に来て笑う。
「実梨ってホントドジだよね〜」
「ハハハハ」
ただ笑って投げ返す。
「上履き忘れるなんて、最悪だね!」
「うん」
ホント、最悪…。
「おーい、みんな席に着け〜。
チャイム鳴ったぞ〜」
「じゃぁまたね、実梨」
「うん」
教室に先生が入って来て、私も自分の席へ戻った。
HRが終わった後、私は先輩のことが気になって、先輩のクラスに行って中を覗いて見た。
「…―でさ!」
扉からこっそりと見ると、先輩はちゃんと学校に来ていて、友達と話ながら笑っていた。
「なんだ…ちゃんといる」
ホッと一息つく。
きっと先輩は、私が来るの遅かったから先に行ってしまったのだろう。
明日からはもうちょっと早く来るようにしよ…。
先輩がいると確認もできたことだし、教室に戻ろ…。
扉から手を離した時だった。
「あれ、君…。」
「え?」
振り返ると後ろには名前も知らない男の人が立っていた。
この教室の前にいるってことは、先輩だろう…。
「君ってさ、あの体育祭で愁に告白された子?」
「愁って…」
もしかして黒木先輩のこと?
「うん、間違いない。
どうしたの?
愁に用事?」
「あ、いえ。
特には…」
「そう?
伝言とかあったら伝えておくけど?」
「い、いえ、大丈夫です!
失礼します!」
笑って言ってくれた人に、私は軽く頭を下げてその場を離れた。
やっぱり、私体育祭でそんなに目立ってたのかな…。
はぁ、と落ち込む。
あんなの、もう2度とごめんだよ…。