先に教室から出た紀田くんは、後から出ようとした私の方に向き、ポンッと頭に手を置いた。




「え?」




「髪、まだ濡れてる
これで拭けば?」




手を置かれたと思ったら、タオルを置かれていた。




確かにまだ少し中と先の方が濡れてて雫が落ちてるけど…。




気づいてたんだ?




「ありがとう…」




小さくお礼を言ってからくしゃくしゃと髪を拭く。





すると




「あー!たくっ!
もうちょっと優しく拭けよ!
髪がいたんじまうだろ!?」




と怒鳴りながら私の髪をふわっと拭き始めてくれた。




「き、紀田くん!?」




「あんたの髪、意外とさらさらなんだからさ、もうちょっと大切に扱ってやれよ」




「え、う、うん…」




紀田くんって意外と人のこと見てるんだ…。




ちょっとビックリ。




「…よし、できたぞ」





「ありがとう…」




すごい、私が拭いた後よりすごくふわふわしてる…。






「すごいね、紀田くん!」



驚きとすごさでつい笑顔になる。





「……っ!」




「…紀田くん?」




紀田くんは突然そっぽを向いてしまった。





「どうしたの…?」




焦って聞いてみると




「な、何でもねぇよ!
ほら、行くぞ
遅刻する!」




そう言って、歩き出してしまった。




「あっ、待って!」




歩き出す紀田くんの後ろを私も急いでついていく。




何だ、案外話やすい人で良かった。










てゆーか、もう遅刻してるんだけどね…。