「もういいよ」




体操服に着替え終えた私は外にいる男の子を入れた。




男の子は扉を開けてすぐ




「悪ぃ、見るつもりじゃなかったんだが…」




謝罪的な言葉を言ってきてくれた。




私もそこまで根に持つタイプじゃない。




もうすんだことは仕方がない。




「いいよ。
私もここで普通に着替えてたのが悪かったと思ってるし…」





「そ、そっか」





男の子は教室に入って自分の席に向かう。





この人は確か…。




紀田隼斗くん…だっけ?




クラスの男の子とはあまり話すことがないから、名前もうろ覚えだし、第一何を話せばいいのかわからない…。





シーンとする教室に、紀田くんが鞄からガチャガチャと荷物を取り出す音しか聞こえなかった。





は〜、私も何やってるんだろ…。




早く授業しに行こ…。





授業用の教科書やらを持って教室から出よう、と思った時。





「…ねぇ、何で体操服に着替えてんの?
次体育だっけ?」




うしろから話しかけられた。




「え、いや、これは…!」



どう説明すればいいのだろう…。




まさか嫌がらせ?イジメ?をされてるなんて言えないし…。




ええーい!




「こ、これはその!
ちょっといろいろあって水かぶっちゃっただけだから!」




「ふーん…」





こんな理由で信じてくれるかな…。




「ま、いろいろあったんだろ
お気の毒様」




あっさり返事を返された。




信じて…くれたのかな?




「あ、ありがとう…」





良かった、信じてもらえて。



…ごめん、ウソついて…。







「ねぇ、今から何?」





「えっと…生物…」




「そっ、ありがとう」




「う、うん…」




何か紀田くんと初めてしゃべるけど、あんまり人に干渉しない人なのかな…?




そのお陰もあってか、いろいろ助かるけど…。







「じゃ、行くか」




「え?」





「一人で行くより、二人で行った方がいいだろ?」




「う、うん…」




なんとなく返事はしてみたものの、そうなの?という疑問が浮かんだ。