【先輩】



さて…どうしようか…。



困ったな〜。




え?
実梨ちゃんと付き合えるようになったのに、何を困る事があるのかって?




まぁそりゃぁ実梨ちゃんと付き合えることはいいこと…ってゆーか、すっごく嬉しいことなんだけど…。




この状況、一体どうすれば…。




「すー、すー」




「み、実梨ちゃん…」




どうやら泣き疲れて眠っちゃったらしい。




俺の肩に実梨の頭がぶつかる。




それでも起きなくて、ずいぶんと深く寝ている様だった。





……。



今日家族皆帰ってくるの遅くて助かった…。





「とりあえず、ここじゃ風邪ひくし、どっか横になれる所へ寝かそう」




かと言って、家族が帰ってくるまでに目が覚めるという保証もないし、家族に見知らぬ女の子が家で寝ているのを見られるのもまずい…。



となると…。




「俺の部屋に連れていくか…」




別にやましいことがあるわけじゃない。




しょうがないことなんだ…。




「よっと…」




寝ている実梨をそっと持ち上げ、お姫様抱っこする。




……軽。




実梨は思った通り軽かった。





すーすーと気持ちよさそうに寝ている。









ゆっくりと自分の部屋のベッドの上に実梨を置いて、寝かせる。




「寝顔見るの、2回目だな…」



寝顔を見ながら小さくふっと笑うと。




「…先輩…」




と実梨が言った。




やばっ!




起こした!?




急いで片手で口を押さえるが、実梨が起き上がってくることはなかった。




「…もしかして、寝言…?」




「先輩、…どこにも…行かないで…」




実梨の目元からツーと一筋の涙が流れ落ちる。




どこにも行かないでって…俺の夢を見てるのだろうか?




俺は実梨から流れた涙をすくって、優しく頭を撫でた。





「大丈夫、俺はどこにもいかないよ…」





ボソッと言うと、実梨の顔は少し微笑んだような気がした。