「だから実梨ちゃん、くれぐれも一人でいない方がいい」
「そう…ですね…」
何でだろ、今頃になって手が震えてきた…。
これからはいつどこで誰かに襲われてもおかしくない。
そんな生活の中生きていくことになる。
考えただけで身震いがたった。
青い顔をした私は下を向く。
そんな震えている私の手を、隣にいた佳の手がそっと重なった。
「実梨…」
佳…。
佳のお陰でふっと手の震えも治まる。
「内野宮くん、実梨ちゃんを守ってあげて…」
「……」
「……。
すいません、それはできないです…」
「え…」
佳の言葉に驚いて声を小さく上げる先輩。
私は声も出なかった。
どういうこと…。
「…俺は実梨を守れません…。
それを今日実感しました…。
俺が一緒にいても役立たたずで…。
先輩の方がいいと思うんです」
「内野宮くん…」
「それに俺、薄々気づいてたんだ…。
実梨が段々先輩に好意を寄せてきてること…」
え、私でもそのこと長々気づかなかったのに、佳は気づいてたの…?
「だから俺、先輩に実梨のこと託します」
えぇ!?
「ちょ、ちょっと待って佳!
佳はそれでいいの!?」
「…ホントは嫌だけど…でも決めたことだから」
「佳…」
佳の目は本気だった。
こんな本気な佳、久しぶりに見たかも…。
「内野宮くん、それって…」
「はい、俺じゃムリなんで…。
先輩に託します」
つまり、私はこれからは先輩と一緒に行動するってこと?
先輩と…付き合うってこと…?
「実梨、勝手に話進んでごめん。
けど俺は本当に実梨が大切なんだ。
だから実梨には幸せになって欲しい…。
別れよう…」
佳…。
ここで別れ話持ち出すんだ…。
まぁ、私の気持ちももう決まってるしね…。
先輩に助けてもらった時からずっと…。
この想いはきっと変わらない…。
「うん…。
佳、いままでありがとう…」
少し無口で、ハッキリしないタイプだったけど、話したら楽しかったし、ずっと私のこと大事にしてくれてて嬉しかった。
佳との二年間の思い出…。
絶対忘れないから…。
ありがとう…。