あれから教室では30分間寝ていた。
夕日がすでに山に隠れようとしている途中。
「……」
「……」
一緒に帰るものの、会話がない…。
な、なんか話題ふらないといけないかな…。
そう思ってふと学校でこっそり飼っているネコの話を出そうとした。
この話をするのは先輩が初めて…。
「あ、あの…!」
「そういばさ、学校にネコいるの知ってる?」
私の声は重なった先輩の声に打ち消されてしまった。
しかも先輩がふった話題もネコ…。
…あれ?
「先輩、そのネコって茶色と白のネコですか?」
「うん、正解!
やっぱ知ってた?」
「いえ、知ってるっていうか…」
そのネコに時々エサとか内緒で上げちゃってます…!
あのネコのこと意外と知ってる人がいたんだね…。
何か残念…。
「でもさ、あのネコ結構お腹が丸かったから親切な人にでもエサとか貰ってるんだろうね」
「…ありがとうございます」
「え…?」
「あ、いえ、何でもないです!」
つい答えてしまった!
しかもありがとうございますって…!
…親切な人、か…。
「…何だか実梨ちゃん顔がニヤケてるよ?
いいことでも思い出した?」
「え、私ニヤケてました!?」
「うん、すごくね!」
クスクスと笑う先輩。
私は気づかぬ間に顔がニヤケていた
何だか先輩に言われると恥ずかしいけど、すごく元気が貰えてくる感じがした
「先輩、わざわざ見送っていただいてありがとうございました」
ペコリと頭を下げてお礼を言う。
私の家につく頃には夕日はすっぽりと山に隠れて暗くなっていた。
「お礼なんていいよ。
俺がしたくてしたことなんだしね」
「ありがとうございます」
私は微笑んで「それじゃ…」と家の中に入ろうとした時、最後に先輩に呼び止められた。
「実梨ちゃん…。
明日返事をくれるんだよね…?」
「……」
あ、そうだった…。
危ない、危ない!
さっきまで完全に忘れてたよ!
「はい…」
そう返事をすると、せつなげに笑う先輩は
「そっか…」
と言って、「また明日」と言い残して帰って行ってしまった。
「明日…」
玄関のドアの取っ手をつかんだまま立ち尽くす。
明日、二人にちゃんと返事しないといけないんだよね…。