【先輩】
やばっ!
委員会の仕事してたらこんなに遅くなった!
理香絶対怒ってるよ!
…って、もう別れたんだっけ…。
早めていた足を遅くする。
もう理香のワガママも、お説教も聞かずにすむんだよね…。
……実梨ちゃん、まだいるかな……。
階段を降りて実梨がいる一年の教室の扉の前に立つ。
俺もちゃんと区切りつけないとな…。
内野宮くんにも悪いことしちゃったし…。
よし、実梨ちゃんがもう帰ってたら諦める!
まだいたら…
えぇーい!
もう6時なんだし、帰ってるに決まってる!
ガラッと眼をつむって扉を全部開け、そっと閉じていた眼を開いて見た。
窓が開いていて、パタパタとカーテンが揺れている。
そのすぐ近くで夕日に照らされた実梨がいた。
「いた…」
まさかだった。
もういるはずないと諦めかけてたのに…。
「実梨ちゃん…?」
静かに机に伏せている実梨の側による。
「寝て…る?」
何とも気持ちよさそうな寝顔だった。
「ふっ、実梨ちゃん、こんなところで寝てたら風邪ひくよ…?」
笑って言っても、返ってくるのはスースーという寝息だけ
そんな彼女が可愛いらしく見えて…。
いや、もう十分可愛いんだけどね?
触りたくなった。
風邪に吹かれてサラサラと揺れる黒い髪。
肩のちょっと先を行ったぐらいの長さ。
その揺れている髪を少し手に取る。
見た目通りホントにサラサラだった。
「…実梨…」
手に取った髪にキスしてみた。
その拍子にシャンプーのすごくいい臭いがした。
ドクドクと波うつ鼓動。
「俺、本当に実梨がすごく好きかも…」
寝ていて聞こえていない彼女に、頬を染めながら伝えた…。



