「だから、ごめん!
俺と別れて欲しいんだ」
「何でよ!」
「さっきも説明したように、俺実梨ちゃんのことが好きなんだ!
だから、もう理香とは付き合えない」
「何で…何であの子なのよ…」
早瀬先輩は黒木先輩の服を掴んでズルズルと膝から落ちていった。
「ごめん…理香…」
いけない場面を見た感じだ…。
「佳、行こ…」
クルッと反対を向いて立ち去ろうとした時、ジャリッと思いっきり砂利の上を歩いてしまった。
静かだった空気に音が響く。
「誰!」
私たちは泣いていた早瀬先輩に見つかってしまった。
「ごめん、佳…」
「いや、いいよ…」
最悪な展開だ…。
こんなドロドロしてるとこで見つかるなんて…。
「実梨ちゃん…」
「は、はい!」
緊張して声が裏返る。
恥ずかしい…。
「実梨ちゃん、俺本気だから…」
「先輩…」
「だから、ちょっとでいいから俺のことも考えてくれないかな…?」
「……」
本当に先輩本気だったんだ…。
ドクンっと心臓が波うつ。
どうしよう、私佳が好きだけど…。
先輩も好きなのかもしれない…。
だって、じゃないとこの心臓の高鳴りは何?
…でも場のノリ的みたいなのでなってるのかもしれないし…。
やっぱりちょっと時間が必要だね…。
「先輩、考える時間を下さい」
「うん、いいよ」
にっこりして言う先輩に私はほっとしながら
「ありがとうございます」
お礼をいった。
けど先輩はすぐ難しそうな顔をして。
「でも…俺はそんなには待ってられない」
と言った。
まぁ、私もそこまで待たせるわけじゃない。
2、3日、間をもらうだけだ。
だったら…
「…明後日の放課後、返事します…」
「うん、わかった」
「明後日の放課後って…」
それだけ伝えて、不満げな佳と一緒にグランドに戻っていった。
そう、明後日の放課後は佳にも返事を出す日だ。
だから、どうせなら同じ日に返事を出した方が平等だと私は思った。
あと2日…。
二人のことちゃんと考えなきゃ…。
私は最後、先輩たちと別れ際に早瀬先輩に言われた言葉を聞き取れていなかった。
「許さない…」