そんな顔するから、別れるに別れられなくなるんじゃん…。
「何か飲み物買って来る」
「え、いいよ、そんな迷惑はかけれない…」
「いいから、実梨は横になってて」
「…はい」
動けない私は佳に言われるがまま、横になっていた。
額に乗せている濡れハンカチが徐々にぬるくなってくる。
…それにしても、あの爽やかそうな声の人には助けてもらったお礼言ってないや…。
またいつか会えるかな?
って、あ……。
私顔覚えてないし、見えてもなかったじゃん…。
これじゃぁお礼を言うどころか、見つけれもしないよ…。
ぬるくなった濡れハンカチを裏返しながらはぁー、とため息をつく。
「何でため息なんかついてんの?」
「うわぁっ!」
いきなりの佳の登場にビックリした。
「はい、カルピスでよかったかな?」
「うん、それでいいよ。
ありがとう」
佳に差し出された缶のカルピスを両手で受けとる。
冷たくて気持ちいい…。
「で、何でため息なんかついてたの?」
自分の飲み物を飲みながら横目で聞いてきた。
「えっと…
さっきのあの人に私お礼言ってないなって…」
「あの人?」
「助けてくれた人」
「あぁ…」
それを聞いて佳はまたグビッと飲んだ。
その様子を見ながら私も開けたカルピスをちょびっと飲む。
「それに、あの人の顔よくみてなくて今度偶然会った時はわかんないなって」
「ふーん」
軽い反応だけする。
「え、それだけ?」
「それだけって?」
「なんかこう…
アドバイスとかもうちょっとなんかくれないの?」
「別に。
そういうために聞いたわけじゃない」
なっ…!
何なんだろ、この人…。
よくわからない…。
「そう」
そっけなく言ってプイッと向き、一気にカルピスを飲み干した。



