借り物人競争が続く中、私はボ〜としていた。



おかしい…。



さっきから先輩のことが頭から離れない…。



どうしよう、どうしよう!



頭を抱えて悩んでいた時。



「実梨!」



上から誰かに呼ばれた。



見上げると、そこには佳がいた。




「け…い?」



太陽の光が反射して眩しく、うまく顔が見えなかったけど、私を呼んだ声は間違いなく佳だった。



そのまま腕を捕まれ、グランドへと向かう…。



まるで先輩の時みたいだ、と思った。





『はい、白組の人持って来ましたか〜?
え〜と、何を引いたか忘れたので、もう一度見せてくださ〜い』



そう言われ、佳はポケットから四つ折りにされた紙を取り出して渡した。



あ、そっか、佳もこの競技に出てたんだっけ…。



そんなことまで忘れるほど私先輩のことばっかり考えちゃってたんだ…。



佳に対する罪悪感が生まれる。



暗い顔で下を向いていると、前からさっきよりも楽しげな声が聞こえてきた。




『おぉ、これは…!
みなさんが楽しみにしていた『好きな人』の紙ですね!?
では、隣の方が君の好きな人で間違いありませんね?』



「…はい」



『では、失礼ですが、名前と年を言ってください』



そう言われマイクを手渡される。




「…1年、桜井…実梨です…」




まぁ佳には付き合っている人がいて、それが私なんだから自分的には驚くことでもない。



…先輩は…もし先輩がこの紙を引いてたらやっぱり早瀬先輩を連れて来てたのかな…?