すると、紀田くんは笑って
「いいよ、桜井はそのままで。
別に、先輩と別れて付き合ってくれって言ってるわけじゃない。
それに、俺も先輩からお前を奪うつもりもない。
けど、好きでいることだけはさせてくれ。
桜井は今まで通り普通に接してくれればいいから…」
「……うん……」
下を向いて元気なく返事をする。
今まで通りに接してくれればいいって言われたけど…できるかな…。
「それからさ…」
まだ何かあるの?
「…キス、無理やりしてゴメン」
「え、でもそれはもう朝に…」
「いや、ちゃんと桜井に謝りたかったんだ。
ホントゴメン!」
深く頭を下げられる。
…なんだ。
紀田くんだって素直で忠実な人じゃん。
人のこと言えないよ…。
「紀田くん、もう気にしてないよ。
そりゃぁ、いきなりされた時はビックリしたけどね…」
ハハハと苦笑いしてみる。
頭を上げた紀田くんはそんな私を見て
「…桜井には敵わないな」
と、口に手をやって笑った。
きっと、私と紀田くんは似てるんだ。
大丈夫、私ちゃんと紀田くんと話せるよ。
ありがとう。
好きになってくれて…。
ありがとう…。



