8時。
そろそろ少しづつ生徒が登校してくるくらいだけど・・・。
うわ~!
紀田くんと二人っきりとか、ホント気まずい~!
誰か、早く来て!
強く願った時だった。
「・・・桜井」
紀田くんがそばに来て私の名前を呼んだ。
「・・・な、何・・・?」
「その・・・昨日はごめん!」
「え・・・」
頭を下げて謝る。
ごめんって・・・。
「もしかして、キスのこと?」
「まぁ・・・。
っていうか、それ以外にねぇだろ」
そっぽを向き、赤い顔をして言う紀田くんに少し可笑しくなった。
「な、何で笑ってんだ・・・?」
「ご、ごめん。
今の紀田くんの顔がちょっと可笑しくって・・・」
「あのなぁ、誰のおかげでこうなってると・・・」
ズイッと紀田くんの顔が近づいてきてからあの時のことを思い出した。
「「・・・っ!」」
紀田君も思い出したようで真っ赤になってる。
たぶん人のことは言えないと思うけど・・・。
お互い動けにないでいると、ガラッと教室の扉が開いた。
その瞬間、紀田くんの身体が反射的に私から離れた。
・・・まぁ、私もちょっとは離れたけど・・・。
入ってきたのはクラスの女子の一人だった。
「あれ、実梨がこんな早く学校に来てるの珍しいね?」
「そ、そっかな~」
ハハハと苦笑いをする。
「・・・何、もしかして私邪魔しちゃったかな?」
冗談交じりに笑って言ってるけど、全然冗談に聞こえないから!
まぁ、誰か入ってきてくれたのはうれしいけどさ・・・。
もしあのままだったらどうなっていたことやら・・・。
「何にもないから、そのニヤケ顔やめてよ~」
「えぇー、ホント?
でも、紀田くん顔赤いよ?」
ええぇぇぇ!?
紀田くんの方を見ると、腕で顔を隠してるものの、本当に赤くなってた。
「ま、実梨も赤いんだけどね」
「え!?」
ウソ!?
ペタッと自分の頬に手をやる。
「ハハハ、実梨おもしろーい」
えぇ、こっちはおもしろくないよ・・・。
「でも、もうそろそろみんな来るから、イチャイチャしないでよね!」
「だから、そんなんじゃないってば~!」
その子は笑い飛ばしながら自分の席に着いていった。
もう、変なこと言うから余計に意識しちゃうじゃん・・・。
チラッと紀田くんを見てみると、ちょうど見てきた紀田くんと目があってしまった。
お互いバッと目をそらす。
ダメだ・・・。
今日一日は紀田くんの顔が見れそうにない・・・。
「じゃ、じゃぁまたな」
そう言われ、紀田くんはまた自分の席に戻っていった。
どうしよう・・・。
紀田くんにドキドキしちゃう・・・。
やっぱりあのキスのせいなのかな・・・。
その日一日は頭の中が紀田くんのことでいっぱいだった。



