【実梨】
紀田くんに…キスをされてしまった。
それも、先輩の目の前で…。
どうしよう、私先輩を傷つけた。
嫌な思いをさせてしまった。
こんな私を、先輩はもう嫌いになったかもしれない。
…嫌だ。
先輩と離れるのだけは嫌だ…!
先輩に腕を引かれ、店の外の裏に連れてこられる。
涙ももう止まってる。
「せん…ぱい…」
先輩は黙ったままだった。
やっぱり、私嫌われ…。
「…きゃっ!」
いきなり腕を引っ張られ、先輩の胸へぶつかった。
「実梨…」
痛い。
ぶつけた鼻も痛いけど、それより胸の方がもっと痛い…。
ギュッと抱きしめる先輩の力が増していく。
私は、また涙がこぼれ落ちた。
「先輩…私、先輩と離れたくないです。
先輩が好きです!
だから…嫌いにならないで…」
「くっ…嫌いになんて、なるかよ…。
俺も、実梨が好きだよ」
ギュッと抱きしめ合う。
そして
「紀田にされたキスなんて、俺のキスで消してやる…」
そう言って先輩は私にキスを落とした。
前のように甘くて、でもちょっと乱暴なキス。
でも、どのキスでも、先輩がしてくれるなら、私は好きです。
「…っ…はっ」
「…ごめん、俺ちょっと焦り過ぎたかも…」
「大丈夫です。
嬉しいですよ」
「実梨…」
小さく微笑んでくれる先輩。
私はそんな先輩が前よりもっと大好きになりました。
「あ、先輩。
上…」
「え…?」
上を見上げると、空から小さな白いものが降ってきた。
「雪…だな」
「初雪ですね…」
先輩と見る今年初めての雪。
外のライトに照らされて光り、すごくキレイだった…。