【紀田】




…何してんだ、俺…。



ポッキーゲームするんじゃねぇのかよ?



なのにポッキー全部食べてるし…。



つか、今…。





「……っ!」



桜井にキス…した?




「紀田…くん」




「さ、桜井!?」




ヤベッ!




泣いてる!



そりゃぁ先輩の前だし、無理矢理やったからだろうけど…。




…俺最低だ…。



好きな子泣かせるなんて…。




「…紀田、てめっ!」



怒り狂ったような顔をした黒木先輩は、押さえつけていた木下さんたちを追い払い、俺のとこに来て胸ぐらを掴んだ。



「ちょっ、黒木!」



「愁!?」



「…言ったよな?
実梨に手ぇ出すなって…」


「すんません…」



なんだよ、この状況…。



「謝って許すと思うか?
この俺が…」



「……」



あぁー、大抵こうなるって想像してなかったのかよ、俺?



って今さら後悔しても遅いけど…。



「どうなるかわかってだろうな…?」



「…好きにしてくださいよ。
殴るなり蹴るなり」



何言ってんだか。




相手はあの黒木集団の元リーダーだぞ?




無事でいられるわけがない。



まぁ、全治2・3ヶ月ってところか。



「この…!」




先輩に殴られる。



そんな時だった。



「黒木先輩!」



泣いていた桜井が声を上げて後ろから先輩に抱きついていた。




「やめてください、先輩!
ケンカはダメです!」



ギュッと先輩を抱きしめる桜井は、少し震えていた。



「みの…り…」



ハッと我に戻ったかのように大人しくなる。




「先輩、やめてください…」



「…わりぃ」



…一言そう言って先輩は桜井の手を取り、二人とも部屋から出ていってしまった。




「…紀田くん、さすがにさっきのはまずかったわね」



「え…?」




「隼人…」




……。



「なんだ、二人とも気づいてたのか…」



俺が桜井を好きなこと。




「まぁ、うすうすは…」




「俺も…」




「そっか…」




俺、桜井に助けられちまったな…。




情けねぇ…。