「さ、みんな引いて引いて!
引いた時まだ見たらダメだからね!」
木下さんが番号を書いた割り箸を持ってみんなに引かせて行った。
「じゃ、俺は残りのこれね。
みんな、せーので見るよ?
せーの!」
「「王様だーれだ!!」」
「……。」
私は3番だった。
「やった、私だ!」
「え、田口!?」
どうやら王様を引いたのはもう1人の女の人らしい。
「ん〜、じゃぁ、1番と4番が、3番の人に抱きつく!」
「えっ!?」
ちょ、ちょっと待って!
3番って私じゃん!
「ほらほら、当てられた人は手を挙げて!」
そ、そんな〜…!?
1番と4番が女の人でありますように!
確率は5分の2だけど…。
恐る恐る手を挙げた。
「あら、実梨ちゃん当たったの?」
「え…。
早瀬先輩もですか?」
「そうよ」
早瀬先輩が見せてくれた番号は1番だった。
良かった!
これでもう1人女の人なら…。
「え、早瀬先輩が1番ってことは桜井3番?」
「え?」
「俺、4番なんだよね…」
苦笑いしながら4番の番号を見せてきたのは…紀田くんだった。
ま、まさか…。
「じゃ、1番さんと4番さんは、3番さんを抱きしめてください!」
「…まぁ私は普通にできるけど…」
そういいながら早瀬先輩は私を一瞬抱きしめてすぐ離れた。
その一瞬の間だけでも、先輩のいい香りがした。
「じゃ、次は4番さんとね」
ズイッと紀田くんを私の前につき出す木下さん。
「え、えっと、あの…」
お互い知ってる仲だから、ドキドキする…。
「おい、待て!
実梨は俺の…!」
「まぁまぁ、これはただのゲームなんだからさ。」
ソファから立とうとする黒木先輩を木下さんが止める。
「けど!」
「抱きしめるぐらいいいじゃん。
あっちだってお前の彼女って分かってるみたいだしさ」
「…紀田だから焦るんだよ…」
先輩が渋々と座っているのを横目で見ていた。
「…抱きしめていい?」
「え?」
紀田くんに目を戻すと、真剣な目をしていた。
「え、え!?」
焦って無性にドキドキしている私を、紀田くんは優しく抱きしめた。
「……っ!?」
緊張して胸が痛い。
どうしよう、息できない!
すると
「…力抜け。
これただの罰ゲームなんだから…」
耳元で紀田くんの優しい声が聞こえた。
「…!」
ギュッと目をつむった時、紀田くんの体が離れた。
「はい、おしまい。
すぐだっただろ?」
「う、うん…」
意地悪そうに笑う紀田くんに、私はまだドキドキしていた。
紀田くん、暖かかった…。



