「先輩…」




「ん?」




「…何でもないです」




どうしよう、何か会話した方がいいよね?




けど内容がない!




「実梨…」




「は、はい!」





いきなり名前を呼ばれてビックリしながらも答える。





あれ、そういえば先輩、私のこと「実梨ちゃん」って呼んでたのに、助けに来てくれた時からずっと「実梨」だ…。




気づくのが遅いけど、改めて思うと何だかくすぐったい。




「実梨…」





「はい。
…先輩?」





「ごめん」




「え、何がですか?」





いきなりのごめん。




「俺、実梨が嫌がらせにあってるの知らなかった…」



先輩を見るとさっきまで嬉しそうだったのに、今はすごく悲しい顔をしている。



「それは…私が話さなかったので知らなくて当然だと思うんですけど…」




気づかれないようにこそこそ動いてたしなぁ…。




「だからごめん。
俺が一番近くにいながら気づかなかった…」




「謝らないでくださいよ…。
先輩は知らなくて良かったんです。」




「どうして…」





「先輩は何もしらず、ただ私の側で笑っていてください。
私、先輩の笑顔大好きです」




つい口走って「大好きです」とか言ってしまったが…まぁいっか。




「実梨…。
でも今度こんなこととか、悩みとかあったらちゃんと言って。
ちゃんと聞くし、相談にも乗る。
だって俺は実梨の彼氏なんだからさ…。
気を使わなくていいんだよ」




手を引っ張られ、先輩の腕の中へ引き寄せられる。




「俺も、実梨の笑顔大好きだから…」




「先輩…」





先輩の腕の中はすごく暖かかった。




「実梨…」





ゆっくりと先輩の顔が近づいてくる。




私は目を閉じた。




そっとお互いの唇が触れあう。




離れても、先輩はまたキスをしてくれた。




優しくて甘いキス…。





私は、先輩が大好きです。