「ほら、泣き止めよ」
そう言って黒木先輩は早瀬先輩の頭をポンポンと撫でた。
…知ってる…。
先輩は誰にでも優しい。
誰にでも、愛される…。
けど、その手はどうして私じゃなくて早瀬先輩なの?
先輩はまだ…。
ズーンと沈んだ想いで下を向いていた時だった。
泣き止んだ早瀬先輩はいきなり抱きついていた黒木先輩の胸を押して離れた。
「理香!?」
「…そうゆうのもうやめてよね…。
そうゆうのは私じゃなくて、愁のもっと大切な人にしてあげるもんなんだよ!」
「理香…」
「そんな、曖昧な優しさなんていらない。
これから愁は、あの子だけを見てればいいのよ!」
「あの子って…」
「後ろで沈んでる子のことよ」
先輩が指差した先には私…。
…え、私?
私に振り向いた先輩は何かにハッとした後
「実梨、ごめん!」
頭を下げてきた。
「え、先輩何で頭下げてるんですか!?」
「…実梨、俺が理香に抱きついてたの、嫌だったよね…?」
「……っ!」
ストレートに言われて言葉に詰まる。
「な、何言ってるんですか。
私は別にそんな…」
「…正直に答えて?」
真剣な眼差し…。
先輩は全部お見とうしなのかな…。
「…嫌、でした」
「そうだよね、ごめん…」
「…妬けました」
「ごめん…」
ただ謝り続ける先輩。
まぁそうそう今カノがいる前で前カノの人を抱きしめたりなんてしないからね…。
「許しません…」
「え…」
お返しにちょっと意地悪をしてみたくなった。