先輩は頬に伝うたくさんの涙を流していた。
それを見た私は胸がギュッと締め付けられるような気がした。
私は昔からお金持ちが嫌いだった。
意地悪で強欲で、お金で何でも解決しようとする…。
そういう考えが大っ嫌いだった。
私たちの苦労もしらず、いつも美味しい料理やキレイな服を着て裕福に暮らしてるんだ。
そう思っていた…。
けど、先輩の話を聞いて私は変化を感じた。
大っ嫌いだったお金持ちも今なら何だか不敏に思える。
だって、お金持ちだからって自由なわけじゃない。
その家のルールとかマナーをちゃんと守らないといけない。
将来が既に決まっているがために、友達と遊ぶ時間もなくいつも勉強…。
それが今目の前にいる早瀬先輩の現状なのだ。
「早瀬先輩…」
何だか先輩の現実を知ってとても辛くなってくる。
すると黒木先輩は無理矢理にでも早瀬先輩を立たすと、そっと抱きしめた。
また…ですけど…。
「理香、ぶってごめん…。
理香にもそんな事情があったんだな…。」
「愁…」
「でも、俺の前だけでももっと甘えて欲しかった。
俺はお前支えられる彼氏だったんだから…」
…ズキッ胸が痛む。
確かに前までは先輩は早瀬先輩と付き合ってたけど、今は私が彼女なんだよ?
そんな甘い言葉、他の人に言わないで…。
聞きたくないよ…。
私は最低だ。
早瀬先輩が今までの思いをぶちまけて傷ついた心で泣いてるのに…私は早瀬先輩に嫉妬している…。



